エッセイ

「2度目のコロナ濃厚接触者」と「リモートワーク」

7月末のある日、私は2度目の新型コロナ濃厚接触者になった。

4連休の最終日に、夫は体の不調をうったえPCR検査へ。

結果は「陽性」、コロナ感染である。

 

夫が感染したため2週間は出社できない旨を伝えるべく、社長のボブに連絡した。

わが社は外資系企業で、社長はオーストラリア人だ。

 

翌朝、ボブから「リモートワーク」の提案をされ、承諾した。

お金を司るでおなじみの経理をしている私にとって、月末月初は繁忙期。

この提案は、非常にありがたいものだった。

 

朝の連絡から1時間ほどして、ボブから「いまからいくね」という旨のLINEが英語で届いた。

ふだんは日本語で話してくれるが、LINEやメールと朝夕のあいさつだけはなぜか英語だ。

彼の日本語は完璧。

そう思っていたある日……。

「今日は暑いから、ハンソでちょうどいいね」

どうやら半袖のことを「ハンソ」だと思っているようだ。

彼にとって、「はんそで」の「で」は助詞だ。

 

「ついたよ」とLINEがあり玄関のドアを開けると、拙宅の前に彼の愛車「ハマー」が道をふさぐように止まっていた。

リモートワークに必要なものを、届けてくれたのである。

 

大きなダンボール箱の中には、私の仕事道具が入っていた。

  • ボブ自作のパソコンの本体 (やたらと高性能)
  • モニター 2台
  • マウス・キーボード
  • ファイル・書類の山

 

拙宅は、静かな住宅街にある。

立ち話をしていると、我らが5丁目の重鎮、谷口さんが散歩の途中らしくゆっくりと通り過ぎていった。

私は谷口さんが週刊誌の記者でないことに、安堵した。

もう少しで、週刊誌に「会社員・ピー子が白昼堂々ゲス不倫!」などという見出しが踊るところであった。

恐るべし、谷口砲!

 

しかし、その視線は明らかにボブに釘付けだ。

無理もない。

平日ののどかな住宅街に、謎の大男が現れたのだ。

家に帰っていった谷口さんは、関係各所への連絡に奔走していたに違いない。

道をふさぐように止まっている真っ黒な鉄の塊(ハマー)、そしてふだん見かけないガタイのよい金髪の外国人(ボブー)。

黒船来航だ!

 

ボブはパソコンのセッティング方法や、会社のシステムを使うためのIPアドレスの説明動画を送ってくれ、設定はスムーズに終わった。

その動画の分かりやすさに魅了され、うっかりチャンネル登録するところだった。

 

ボブの迅速な対応は、感謝の念に堪えません。

いつも影で、ブーボーって「業界用語風」に呼んでごめんなさい。

ブーボー、こんなピーカンな日に、仕事でケツカッチンのところギロッポンちゃんねーしーすー、その後しめのメンラーからの、巻きでこんなショバまでありがとう。

 

我が社は、社員全員パソコンのモニターを1人につき2台、与えられている。

社長であるボブは、5台だ。

 

入社当初は「ディ・トレーダーかよ!」という月並みなツッコミを入れそうになるのを、グッとこらえたものである。

そんなことを思い出していたら、他にも今までに勤めていた会社とは違うところがいくつかあることに気がついた。

 

わが社の屋上には、オシャレなBBQスペースがある。

 

ド平日に…

 

ボブ:「ピー子、今日お弁当もってきたかい?」

ピー子:「パンもってきた。どうしたの?」

ボブ:「ランチに屋上で、みんなでBBQやろう」

ふつうに仕事中のド平日のお昼に、BBQパーティが始まるのであった。

「マシュマロも焼こうよ、じゃねーわ!」というツッコミを入れそうになるのを、グッとこらえたものである。

 

ボブとともに銀行へ…

 

ボブはハマーの他に、アウディのR8スパイダーというスポーツカー(オープン・2シーター)も所有している。

ボブ:「今日は天気がいいから、オープンにするんだね」

そして、到着した銀行の駐車場は地下でエンジン音がかっこよく響くため、何度もふかして悦に入る。

そんなボブであった。

社長と銀行にいくのに、オープンカーて!

「デートかよ!」というツッコミを入れそうになるのを、グッとこらえたものである。

 

汗をかいたから…

 

我が社には、1階と2階にシャワールームがある。

ある真夏の午後のこと。

ボブ:「ハードな作業で汗をかいたから、シャワー浴びてくるんだね」

シャワーを終えたボブは、ちょっとしたバーのようにお酒が棚にズラリとならんでいる応接室で、キンキンに冷えたビールを飲むのであった。

「プッハーーー!じゃねぇわ!」というツッコミを入れそうになるのを、グッとこらえたものである。

 

まだまだ暑い日が続いています。

みんなで「ハンソ」を着て、夏を乗りきろう!!