エッセイ

「ご近所付き合い」パーフェクト マニュアル!!

アルファロメオ

シンプル且つ洗練されたデザインの封筒が、拙宅に届いた。

 

 

ピー子
ピー子
あら、舞踏会の招待状かしら?

 

そんな想像に思いを馳せながら、封をあけた。

 

もう、3年経ったのか……。

 

私の愛車、「フィアット500」の車検のお知らせであった。

 

必要なのは、ドレスとガラスの靴ではなく「車検代」だ。

 

 

「1週間かかるので、代車を用意します」とのことだった。

 

どうしてもETCが必要だと伝えると、なんとアルファロメオの「ジュリエッタ」を貸してくれるというではないか。

 

これはもはや、舞踏会のお誘いといっても過言ではない。

 

 

私と夫はアルファロメオの「ジュリエッタ」が好きで、前々から1度乗ってみたいという野望を抱いていたのだ。

 

 

車検という名の舞踏会当日、かぼちゃの馬車ならぬ代車「愛しのジュリエッタちゃん♡」を引き取りに行った。

 

 

そして、帰宅。

 

 

運転が苦手なうえに、ふだんより大きな車という悪条件が重なり、駐車に15分を要してしまった。

 

もしこれが舞踏会ならば、完全に「舞踏会に遅れちゃうわ」である。

 

 

その翌日、会社から帰宅した時のこと。

 

車から降りて、玄関に向かうと……。

 

 

谷口さん
谷口さん
おかえり!車、買ったの?

 

我らが3丁目の重鎮、谷口さん is in da house (登場)!である。

 

 

ピー子
ピー子
違うよ。車検だから代車!

 

 

引っ越してきた当時、初めて谷口さんを見たときは凍り付いた。

 

肩で風を切りながら、くわえタバコで歩く姿はまるで「輩(やから)」そのものだった。

 

 

輩の中の輩「トップ オブ ヤカラ」 の称号を、Mr.谷口に!

 

皆さん、彼に惜しみない拍手を!!!

 

 

バチバチバチバチー!

 

 

しかし、Mr.谷口は第一印象に反して、風で飛ばされ道路に落ちていたTシャツを周辺の家をしらみつぶしにあたり、持ち主に届けるという優しさをみせてくれた。

 

「捜査は足で稼げ」を体現してくれたのである。

 

 

刑事の中の刑事「トップ オブ デカ」 の称号も、Mr.谷口に!

 

皆さん、彼に惜しみないスタンディングオベーションを!!!

 

パチパチパチパチー!

 

ブラボー!

 

 

私が帰宅する時刻を熟知しているMr.谷口は、その時間によく現れる。

 

しかもその日の彼には、明確な目的があった。

 

急に現れた、ベカベカでデラデラの「アルファロメオ」について、知りたかったのである。

 

「ピー子が車を買い替えた」という仮説を立てつつも、彼には迷いが生じていた。

 

それを払拭すべくMr.谷口は、散歩と称して拙宅の周りを幾度となく徘徊したのである。

 

 

谷口の仮説

 

フロントガラスの車検のステッカーから計算して、2ヶ月前に購入したことになる。新古車か?

 

あんなにうれしそうにドヤを顔しながら、フィアット500に乗っていたのに。

 

もしや3ヶ月ほど前に、彼女の家の前で白昼堂々 ” 密会 “していた大柄で金髪の外国人、たしかボブとかいったか……。

 

彼から「ジュリエッタ」をプレゼントされ、あやつは悪魔(デビルボブ)に魂を売ったのか?

 

いや、待てよ。ピー子がこの3丁目の住民に「我こそは女王だ」という絶大な力を示すためのマウンティングかもしれない。

 

なんだと?このオレ様の縄張りを、荒そうというのか?

 

けしからん!!!

 

 

まさに、現場百編!!

 

 

現場百編 (げんばひゃっぺん)

警察の捜査に使われる表現で、事件現場に隠されている解決への糸口を、100回足を運んででも慎重に捜査するべきということ。

 

 

しかし、ピー子の第一声、「違うよ。車検だから代車!」によりMr.谷口の仮説はもろくも崩れ去った。

 

彼は血眼になって収集したデータを披露しながらも、私から更なる情報を引き出そうと躍起になった。

 

彼は拙宅の界隈では有名な、情報通なのである。

 

 

 

その日、駐車はスムーズにできたが結局、谷口の取り調べ対応に15分を要してしまった。

 

 

秋晴れの日曜日、朝から町内会の通学路清掃が行われた。

 

 

谷口さん
谷口さん
おはよう!

 

 

またしても我らが3丁目の重鎮、谷口さん is in da house (登場)!である。

 

 

シャッシャッシャッシャッ……。

 

 

音の方に目をやると、職人バリにほうきを使うMr.谷口の姿があった。

 

 

ピー子
ピー子
谷口さん、ほうきのプロやん

 

 

谷口さん
谷口さん
オウ、そうか!?深い穴は、ほうきを縦にするんだぁよ!

 

 

シャッシャッシャッシャッ……。

 

 

谷口さん
谷口さん
オウ?穴からカブトムシの幼虫がでてきたぞ

 

ピー子
ピー子
冬眠してんじゃん。土かけてあげていい?

 

 

谷口さん
谷口さん
ダメだ!

 

 

ピー子
ピー子
なんでぇ?かわいそうじゃん。おねがい!!

 

 

谷口さん
谷口さん
わかっだぁよ!土をかけてやんなよ

 

 

ピー子
ピー子
やったー!ありがとう

 

 

 

虫をいじめたり、助けたり……。

 

 

そんなMr.谷口に「トップ オブ アメとムチ」 の称号を!

 

 

皆さん、彼に惜しみない喝采を!!!

 

パラパラパラパラ……。