漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ。
どんどん、どんどん、どんどん。
漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ。
今宵も大海原へ舟を漕ぎ出した。
「ピー子丸」
誤解のないように、言っておこう。
これは、「壮大な冒険の話」ではない。
「私と読書」についての話だ。
寝る前にベッドで本を読むことは、私の習慣であり、たのしみのひとつだ。
昨夜もいつものように、本を読んでいた。
確かに読んでいたはずだった……。
チュン、チュン、チュン。
カァー、カァー、カァー。
キー、キー、キー。
ペッポ、ペッポ、ペッポ。
「小鳥のさえずりが聞こえる」
気がつくと、朝が来ていたのである。
「しっかし、鳥、多っ!どんだけおんねん!」
本を読みながら眠すぎて、カックン、カックン、カックン。
睡眠という名の海へ、舟を漕ぎ出したらしい。
本といえば、2012年に「本屋大賞」を受賞し、翌年映画にもなった『舟を編む』がある。
ピー子の手にかかると「舟を漕ぐ」に。
『舟を編む』と「舟を漕ぐ」どちらもすばらしい作品のように思えて、甲乙つけがたい。
しかし、その実態は似て非なるものだ。
前者では、辞書に情熱と愛をもった編集部メンバーが、辞書を作るまでの長い旅が描かれている。
後者では、私が情熱をもって人生を捧げていたのは、睡眠という7時間の長い旅だ。
こうなったら、自分に「寝具屋大賞」を贈ろうではないか。
「お酒が強そう」
「本読むの?意外!」
初対面の人や、私を知らない人によく言われる、二大セリフだ。
「お酒が強そう」は、あれか?
ワシがクラブ通いや、合コンに明けくれていたからか?
アパレル関係の仕事をして、チャラついていたからか?
酒豪の覇気を、まとうておるか?
お酒を飲める人に憧れているので、悪い気はしないが。
お酒はまったく飲めません。
ペコリ。
いままでに読書好きを、積極的に公言したことはない。
読書好き → 暗い → 友達がいない → やべーやつ
と思われるのではと、不安だったからだ。
他人が読書好きと聞くと、知的でカッコイイという印象をもつ。
だが、自分にはそれが適用されないような気がしていた。
しかし、「本読むの?意外!」を何度も言われ、ついに眠れる獅子が目を覚ました。
声を大にして言おう。
初めて次郎さんと出会ったのは、小学校の図書館だった。
『三毛猫ホームズ』だったか、高学年のとき赤川次郎の推理小説を知った。
そして、本に、読書に、推理小説に恋をした。
それからは、下校中も「ながらスマホ」ではなく「ながら読書」をするほど没頭した。
前をまったく見ずに歩いていたので、電柱に勢いよくぶつかったり、家に続く坂道で崖から転げ落ちて血だらけになった。
ここだけの話だが、落ちる寸前まで崖であることに気づいていなかったため、運よく空中を2~3歩、歩くという偉業を成し遂げることができた。
気づいた瞬間に、人は落ちるのだ。
キズも存在を知らないうちは痛くないが、気づいた途端に痛くて我慢できない。
本が私にくれた100 (5) のこと
- 未経験なことを疑似体験できた
- 情報、知識を効率的に学べた
- 言葉が増え、世界が広がった
- 読んだことを実行し、自己成長できた
- 想像力が鍛えられた
本を通じて、良き師、仲間にも巡り会うことができた。
そして、自分の奥底に埋もれていた夢に、気付くことができた。
仲間と具体的に夢を語り合い、もう迷うことはない。
文章を書きたい。
エッセイで自分の頭のなかにあることを、出してみたい。
それを読んでくれた……。
どこかの誰かが、クスッ、クスッ、クスッと笑ってくれたら最高。
どこかの誰かが、ポワワワーン、ポワワワーン、ポワワワーンと癒やされてくれたら最高。
どこかの誰かが、キラッ、キラッ、キラッと輝いてくれたら最高。
今宵も大海原へ舟を漕ぎ出した。
「ピー子丸・改」
エッセイを読んでくれた人の心を動かしたい、という情熱と愛だけで突き進む長い旅が始まった。
ピー子のエッセイが「本屋大賞」と「寝具屋大賞」をW受賞するという、偉業を成し遂げることになるとは……。
その時のピー子は、知るよしもなかったのである。
今回の舟出は、もしかしたら「壮大な冒険の話」の始まりなのかもしれない。
ピー子、待望の処女作
「舟を漕ぐ」